ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)という資格は皆さんご存知でしょうか?
世間一般的には馴染みの低い資格ですが、ビル管理(ビルメンテナンス)業界では定番といえる資格なんです。
本記事では、そんなビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)について、独学で合格する為の勉強方法と勉強時間を中心に解説しています。
こんな方にオススメの記事です
- 独学でビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)の合格を目指している
- 効率的な勉強方法や勉強時間を教えて欲しい
- ビル管理士ってそもそもどんな資格か知りたい
- できれば一発でビル管理士を取得したい
僕自身、ビル管理士は一発で合格することができたので、体験談も含めてかなり踏み込んだ内容となっています。是非最後までご覧くださいませ。
ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)とはどんな資格?
ビル管理士の正式名称は【建築物環境衛生管理技術者】です。長いですし、言いにくいので「ビル管」や「ビル管理士」と省略して呼ばれることがほとんどです。
ビル管理士は建物管理の最高責任者となれる資格で、オーナーやテナントに対して意見をを述べる権利があります。さらに、面積3000m2以上の建物にはビル管の資格を持っている人を必ず1人は選任しないといけないので、かなりの需要がある資格でもあります。
その為、ビル管理の仕事をやる上では欠かすことのできない資格です。需要も高い資格なのでビル管理の仕事への転職には絶大な力を発揮します。
ビル管理やビルメンテナンスの上位資格をまとめた【ビルメン3種の神器】の内の一つでもあります。
関連記事:数学が苦手な文系には【ビルメン3種の神器】は茨の道
ビル管理士の免状はボイラー2級や電気工事士と違って賞状で貰うことができます。賞状で貰うと嬉しくなっちゃいますよね。
ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)の試験概要
試験日
- 試験日:年1回(毎年10月上旬)
ビル管理士の試験は毎年10月上旬に実施されます。年1回しか受験することができないので、結構プレッシャーがかかる試験です。(ボイラー2級や危険物乙4のように毎月実施してくれれば楽なのですが…)
試験形式
- 試験形式:筆記試験(5択のマークシート)
ビル管理士の試験形式は資格試験定番の5択のマークシートです。
受験費用
- 受験費用: 13,900円
ビル管理士の受験資格
注意点として、ビル管理士の試験には受験資格があり、全ての人が受験することはできません
受験資格:ビル管理(ビルメンテナンス)の実務経験が2年以上ある人
ビル管理士を受験するには上記のように2年以上のビル管理の実務経験が必要になります。
建物の用途なども細かく規定があるのですが、それらを満たしていないと受験することができません。試験日までに実務経験を2年以上満たしていれば良いので、申し込みの段階で2年以下でも受験することは可能です。
また、実務経験を満たしている場合でも、自分の勤めている会社に実務従事証明書に判を押して貰う必要があります。
受験資格のないビルメン4点セットとは違って、書類の作成だけでも結構手間がかかります。
しかし、この受験資格こそがビル管の資格の価値を上げてくれいるのは事実です。ビル管を取得しているということは、最低でも2年以上はビル管理の仕事をしていたことの確固たる証明になりますからね。誰でも気軽に受験することができない資格なので、持っているとその分価値が高いです。
合格率と難易度
ビル管理士の合格率は10%台とかなり低くなっています。何年かに一度当たり年があり、合格率が20%後半~30%と前半と跳ね上がる年もあります。
受験する年によって合格率にバラツキがありますが、ほとんどの年で10%台の合格率しかないので、ビル管理士は難易度の高い試験と言えますね。
合格率と難易度について詳しく知りたい方は下記記事をご覧くださいませ。
関連記事:建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)の合格率から難易度を考察してみた
ビル管理士の勉強方法
ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)の試験は科目が7科目に別れています。
午前の科目
- 建築物衛生行政概論(20問)
- 建築物の環境衛生(25問)
- 空気環境の調整(45問)
午後の科目
- 建築物の構造概論(15問)
- 給水及び排水の管理(35問)
- 清掃(25問)
- ねずみ、昆虫等の防除(15問)
ビル管理士の合格基準は7科目の合計で65%以上正解しつつ、各科目で40%以上正解する必要があります。問題数の合計は180問なので117問正解できればOKです。
一つの科目で40%以上正解出来ていれば、他の科目で挽回することが可能となっている試験です。逆に言うと、正解率が80%以上あったとしても、一つの科目だけ正解率が40%を下回ってしまうと不合格になってしまうので注意が必要です。
科目数と問題数だけ見るとかなり多く感じてしまい、取っつきにくい試験というイメージがありますよね。
しかし、ビル管理士の勉強方法はとてもシンプルで大丈夫です。過去問丸暗記で行きましょう!
過去問メインで勉強しよう
ビル管理士はとにかく出題範囲が広いです。空気環境から建築、さらには清掃や害虫なども出題されます。しかし、一つ一つはそこまで深い知識は要求されません。広く浅くの試験です。過去問をひたすら反復して、満遍なく知識を付けていくことが大切です。
過去問を見て貰うと分かるのですが、一般常識で回答できる問題も多いのがビル管理士の特徴です。
例えば、
- 一般的に高齢者は若年者に比べ、暖かい温度を好むとされる
- ドブネズミは雑食の動物である
上記の様な簡単な選択肢の問題も多く出題されています。正直一般的な知識でも解答できますよね。
また、ビル管理士の試験は過去問の類題も多く出題されます。科目によっては過去問とそっくりの問題もあったします。
- 試験範囲が幅広いが、深い知識はいらない
- 一般常識で解ける問題もかなりある
- 過去問の類題も多く出題される
以上のことを踏まえると、ビル管理士の試験を効率良く勉強する方法が過去問の丸暗記です。反対に、試験範囲が幅広いのでテキストから勉強することはオススメできません。めちゃくちゃ分厚いので確実に嫌になり挫折します。
過去問を暗記しつつ、苦手だなと思う科目に関してのみ、テキストで理解を深める方が絶対に良いです。テキスト中心に勉強するのは効率が悪すぎます。
次にビル管の試験を科目ごとに掘り下げて見ていきます。
建築物衛生行政概論
1科目は法令です。正直この科目は満点近くを狙えます。出題のパターンが決まっていますし、過去問と似た問題も多いので点数を稼げる科目ですね。
逆に法令で点数を落とすと、合格が厳しくなってくると言っても過言ではありません。過去問を反復して満点近くを取れるようにしましょう。
建築物の環境衛生
2科目の環境衛生も比較的点数を稼げる科目です。先ほどの例にも挙げた「一般的に高齢者は若年者に比べ、暖かい温度を好むとされる」と言った一般常識で解答できる選択肢も多いので、取り組みやすい科目です。法令と同様にできれば高得点を狙いたいですね。
空気環境の調整
3科目は空気環境の調節です。ビル管理の仕事をされている方は実務と関わりが近い科目ですが、難易度は高めです。空気環境の測定方法や空調設備など覚えることも多いですし、計算問題も何問か出題されます。
問題数が45問と一番多い科目なので、正解率が40%以下で振るい落としに合う可能性も低いです。高得点を取れるに越したことはないですが、多少落としても影響は少ない科目です。
3科目目の空気環境の調整が終わったら午前の試験は終了です。
建築物の構造概論
午後一発目におこなわる科目が建築物の構造概論です。この科目で一番注意しないといけないのが正解率が40%以下で振るい落としに合うことです。
問題数が15問と少ないので、6問は確実に正解しないといけません。過去問の類題が多い科目ではありますが、油断はできないです。
確実に40%以上は取れるように過去問を繰り返しておきましょう。
給水及び排水の管理
問題数が35問と2番目に多い科目です。配管の種類や給排水設備などの問題が出題されます。設備管理の仕事をしている人は取っつきやすい科目かと思います。
計算問題も数問出題される傾向にありますね。この科目は問題数が多いので、多少落としても影響は少ないです。
清掃
6科目目が清掃です。清掃はひたすら過去問を使って暗記していきましょう。清掃機材や薬品の名前など覚えることは多いですが、暗記で対応できます。難しい問題は少ないので、暗記勝負の科目です。比較的点数を稼ぎやすい科目と言えます。
ねずみ、昆虫等の防除
最後の科目は害虫関係です。こちらも建築物の構造概論と一緒で問題数が15問しかないので振るい落としには注意が必要です。
しかし、「ドブネズミは雑食の動物である」のような簡単な選択肢の問題も多いので、取り組みやすい科目ではあります。
振るい落としに注意が必要と言いましたが、満点も目指しやすい科目なので、できるだけ点数を稼ぎにいきましょう!
勉強方法のまとめ
上記ではビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)の勉強方法について見てきました。
長くなったので軽くまとめます。
- 科目は7科目あり、問題数は180問
- 全体で65%以上正解で合格、一つでも40%以下だと不合格なので注意(180問中117問で合格)
- 勉強方法は過去問暗記でOK!
- テキストから入ると効率が悪いので、テキストは苦手な問題の補足に使う
- 法令、建築物の環境衛生、清掃、害虫の4科目は点数が稼ぎやすい科目なのでできるだけ高得点を狙いに行くべし
- 建築物の構造概論は15問しかないので、40%以下にならないように注意する
【ビル管理士】おすすめの過去問題集とテキスト
ビル管理士の勉強方法の部分でも触れて来ましたが、ビル管理士の試験対策は過去問の反復が大切になるので過去問題集は必須と言えます。過去問題集で苦手な部分を補足するためにテキストがあると尚良しです。
過去問題集
ビル管理士の過去問題集ではこの【ビル管理士試験模範解答集】は定番です。通称赤本と呼ばれています。試験会場を見渡しても使っている方が大勢いました。6年間分の過去問が収録されています。
こちらの【全7科目365分類 ビル管理技術者試験問題集】もビル管の過去問題集ではかなり有名です。黒本と呼ばれています。赤本とは違って、科目ごとに別けて過去問を掲載されています。10年分の過去問が収録されています。
赤本と黒本どっちが良いの?
個人的には過去問の収録数が多い黒本がオススメです。また、過去問が科目ごとに別けて掲載されているので、苦手な分野だけ重点的に勉強する時も便利です。
本番の試験に近い形で過去問を解きたい方は赤本がオススメですね。
テキスト
テキストはこちらの【ビル管理士試験合格テキスト】がオススメです。図やイラストが多いので過去問の補足に役立ちます。
ビル管理士の勉強方法は過去問メインになるので、テキストは何冊も購入する必要はないです。あくまで補足に使いましょう。
ビル管理士の過去問題集やテキストについて詳しく知りたい方は下記記事をご覧くださいませ。
ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)の勉強時間
ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)の勉強時間のポイントは長すぎず、短過ぎない適度さです。
僕がそうだったのですが、ビル管理士は試験範囲が幅広いことや問題数が180問と多いことから、どうしても早めに勉強に取り掛かろうとしてしまいます。
しかし、勉強方法のところでも解説してきましたが、ビル管理士の試験内容って簡単な問題も多いんです。しかも、2年以上の実務経験を踏まえて受験する訳ですから、予備知識もそれなりにあるんです。
- 清掃の仕事をしている人:清掃、ねずみ、昆虫等の防除
- 設備管理の仕事をしている人:空気環境の調整、給水及び排水の管理
上記のように2年以上の予備知識がある状態で受けるので、いきなり過去問を解いてもある程度正解できてしまうんです。
実際に過去問を解いて見ると『あれ?意外とビル管理士って簡単なんじゃね!?』と感じてしまうと思います。
この状態で勉強期間や時間を長く取ってしまうと必ず中だるみしていまいます。イメージとしてはこんな感じ。
この中だるみ期間は本当に勿体ないですし、不必要な時間なので、丁度良い勉強時間を設定することが大切です。
ビル管の勉強は過去問の暗記がメインになるので、勉強期間としては3ヶ月あれば十分に対応できると思います。1日1時間しか勉強時間を確保できなくても100時間近くは勉強することが可能です。
3ヶ月の勉強期間だと、適度な焦りも生まれて、中だるみをせずに効率的に勉強することができます。
『いやいや!私は中だるみとかしないから』と自信がある人は早めに勉強を開始してももちろんOKです。
勉強時間の割り振り方
3ヶ月の勉強時間は割り振り方のオススメは以下の通りです。
こんな感じで、ビル管理士の勉強を進めるのが効率が良くてオススメですね。
とにかくビル管理士の試験対策は過去問メインでいきましょう!
ビル管理士の試験日は10月上旬なので6月終わりから7月上旬に開始すると丁度3ヶ月の勉強時間を確保できます。
僕がビル管理士に合格した時の勉強時間
僕がビル管理士を一発で合格した時の勉強時間は以下の通りです。
- 勉強時間:半年ほど(4月から勉強スタート)
- 勉強方法:過去問メイン
ビビって4月から勉強しましたが、ゴールデンウィーク前には既に中だるみをしていました(笑)
初見の過去問を解いても、合格点に近い110点くらい取れることもあったので、『これは余裕だわ』と見事に勉強のやる気が消え去りました。
6、7月はほとんど何もしていなかったです。8月に入って流石に勉強しなきゃと思い、勉強を再開しました。
基本的には過去問を暗記するようなイメージでやってました。空気環境の調整の範囲が苦手だったので(設備管理やってるくせに)、そこはテキストやインターネットのビル管理士情報サイトで理解を深めました。
基本的には過去問しかやっていないですね。勉強時間としては1日平均2時間程度です。休日や宿直明けは、もう少し多めに勉強していました。
無事に一発で合格できたのでホッとしています。中だるみ期間が本当に余計でした・・・
試験当日のワンポイントアドバイス
ビル管理士の試験は午前と午後に別れています。午前の試験は途中退出もできるので、お昼休憩と合わせるとかなりの時間があります。この時間を利用することで午後の試験勉強ができます。
午後一発目の科目は建築物の構造概論なので、40%以下の振るい落としが怖い科目です。お昼休憩を使って再度復習するのもオススメです。
少し余談になりますが、午後の試験に向かうと結構な人数がいなくなっています。午前で不合格を悟った人達が帰宅しているからです。最初は気になると思いますが、試験に集中しましょう!
ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)は講習でも取得できる!?
ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)は試験を受けなくても講習を受講することで取得することも可能です。
しかし、講習と言っても100時間近くあります。1ヶ月と長期に渡って参加しなければなりませんし、受講費用も10万円以上します。
普通に働いていたら参加することはできないので、試験で合格することを目指しましょう!
会社によっては、有給でしかも受講費用も全額会社負担で参加させてくれることもありますが、稀なケースです。管理職なら別ですが、一般社員にそこまでしてくれる会社はまずありません。
ビル管理士は独学でも十分に取得できるので、最初から講習を狙う必要はないかなと思います。
取得すれば転職に有利になる
ビル管理(ビルメンテナンス)の仕事は資格が重要視されます。その中でもビル管理士は上位資格になりますし、需要の高い資格です。
また、ビル管理士を受験するには2年以上の実務経験が必要になってくるので、資格を持っているだけで実務経験の証明にもなっちゃうんです。
ビル管理業界でビル管理士の資格を持っていることは、それだけで転職に有利になります。キャリアアップをしたい方や大手のビル管理会社に転職したい方はビル管理士は本当にオススメの資格です!
関連記事:【ビル管理士】がビル管理の資格の中でも最強にコスパが良い理由とは
最後に
本記事では、ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)について、独学で合格するための勉強方法や勉強時間を中心に解説してきました。
まとめるとこんな感じです。
- ビル管理(ビルメンテナンス)の仕事には欠かすことのできない資格
- 取得できれば転職や就職にも有利になる
- 受験資格:試験日までに2年以上のビル管理の実務経験が必要
- 勉強方法は過去問暗記でOK!
- 勉強時間は長すぎと中だるみするので3ヶ月がオススメ
ビル管理士はビル管理の仕事には欠かすことができませんし、需要も多いので、取得する価値が高い資格です。
取得できればリターンも大きいので、頑張って勉強していきましょう!
問題数や試験範囲の広さから一見すると難しいイメージがある資格ですが、独学でも十分に合格を目指せる資格です。
まずは、テキストや過去問題集を見るところから始めて見ましょう!
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